ロックアイランドのラグーン珊瑚礁(パラオ)

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Snorkeling over Reef

2013年6月2日放送「THE 世界遺産」は、「クラゲ600万匹がすむサンゴの島 ~ 南部ラグーンのロックアイランド群(パラオ)」でした。

 

 

熱帯の楽園であるパラオの海には、不思議な生き物がいっぱいです。

海底の砂地には、横から見るとまるで蟹のように見える魚の姿がありました。

背びれの横に、大きな丸い目玉模様を持つシグナルゴビー(通称カニハゼ)です。

赤く細長い無数の触手を持つ光る貝、ウコンハネガイ

生きた化石と呼ばれるオウムガイ

黄色い体色のギンガハゼが暮らす砂地の穴から白いテッポウエビが出てきました。

テッポウエビはせっせと穴に溜まった砂を片付けています。

ギンガハゼはテッポウエビが掘った穴で仲良く共生しているのだそうで、居候させてもらう代わりに穴の入り口で門番の役目をしています。

 

≪パラオの海≫

太平洋上に浮かぶパラオの400もの島々は、その一つ一つにユニークな特徴を持っています。

まずはその見た目、点々と浮かぶ小島の形は、上にこんもりと緑の木々を載せ、まるで緑のマッシュルームみたいな可愛い丸っこいキノコ型をしています。

 

パラオ南部に広がる珊瑚礁の浅瀬ラグーンに浮かぶのは、石灰岩でできた無数の島々がロックアイランドです。

ロックアイランド群はサンゴが生んだ独特な地形です。

ダイバーたちが憧れるダイビングスポットであるパラオは、西太平洋で最も豊かな珊瑚礁の海です。

地球上に生息するサンゴの内、8割以上が見られるそうです。

クリアブルーの海中には熱帯魚のアデヤッコ

海亀タイマイ

多様な環境は絶滅の危機に瀕した海洋生物たちの住処となっています。

大きさ1m以上、重さ200kgにもなる世界最大の二枚貝オオシャコガイは100年も生きるそうで、貝殻の周りには色彩鮮やかなソフトコーラル(サンゴの仲間)がびっしりと付着しています。

 

≪ロックアイランド群の島々はなぜマッシュルームのような丸いキノコ形をしているのか?≫

南部の海域には珊瑚礁で取り囲まれた浅瀬ラグーンが広がり、石灰岩でできた緑の島々「ロックアイランド」が大小400余りも点在します。

透き通るようなコーラルブルーの珊瑚礁に縁取られた小さな緑の島々を上空から見下ろす絶景ポイントは、まさに海に浮かぶ庭園を見渡しているかのような気持ちになることができる「セブンティアアイランド」です。

ラグーン一帯は野生生物の保護区となっていて、普段はボートで近づくことも禁止されています。

今回の取材はレンジャーが同行するという条件のもとで、特別に撮影許可が下りました。

ボートの横をウミガメが泳いでいきます。

海辺の空には鮮やかな羽を羽ばたかせるシラオネッタイチョウが待っています。

まるでインコが巨大なカモメのような姿になったようです。

島に近づくと小さな真っ白い砂浜がありました。

ラグーンにある島は、ほとんどが波打ち際が内側に抉られたような壁になっていて、砂浜になっている場所は数少ないそうです。

レンジャーのアモス・エミリアーノさん「ウミガメの足跡だよ」

ウミガメの貴重な産卵場所で卵は砂の中にあります。

アモスさんが落ちていた枯れ枝と落ち葉を使ってウミガメの足跡を消していきます。

パラオでは昔からウミガメの卵を食べる習慣があるそうで、レンジャーは産卵の痕跡を気付かれないようにするため、こうして見回っているのだそうです。

白い砂浜はサンゴの欠片が集積したものです。

珊瑚礁から生まれた石灰岩が隆起してできたのがロックアイランド群です。

長い年月の間、雨、風、波で浸食されていき現在のようなマッシュルームのような丸いキノコ形になったのだそうです。

不思議な形をしたロックアイランドの島々の元の姿は、珊瑚礁だったのです。

 

≪青の洞窟≫

島の壁伝いに進みます。

潮が引くと顔を出す洞窟が、ぽっかりと黒い口を開けていました。

島に降った雨が石灰岩を溶かして水の通り道を作ったのです。

洞窟の中から外界の方を見ると、太陽の光がコーラルグリーンの水面に反射して海面を青白く煌めかせています。

 

≪海中鍾乳洞≫

島の絶壁伝いに海面の下を覗き見ると、黒い影がありました。

潜ってみると深い横穴が口を開けていました。

暗い海の中を進みます。

見上げると透き通った水の中に上から垂れ下がっているのは白い鍾乳石です。

ここはシャンデリアケーブと呼ばれる世界でも類を見ない海中鍾乳洞です。

シャンデリアケーブの一番奥には海中に沈んでいない空洞がありました。

海面に上がるとドーム型の天井に巨大な鍾乳石ができています。

ここはかつては陸地だったそうですが、約1万年前に最後の氷河期が終わった際に氷が溶け出して海面が上昇していき、洞窟が丸ごと海に沈んだ跡なのだそうです。

 

≪腸を洗うマンタ≫

海にできたコーラルグリーンに染まる一本の水路はジャーマンチャネルと呼ばれ、外洋とラグーンとを繋ぐ魚たちの通り道となっていて、パラオで一番のダイビングポイントです。

ダイバーたちが一目見ようと待ち構えていたのは、オニイトマキエイ(通称マンタ)でした。

誰もが一度は遭いたいと夢見る世界最大のエイで、大きいマンタになると横幅8mほどにもなります。

マンタが間近を胸びれを上下に羽ばたかせて空を飛ぶように泳いでいきます。

腸洗いをしていました。

マンタは排泄の時、肛門から腸管を外に(海中に)出して洗うのです。

 

≪海と繋がったマリンレイク≫

パラオの島々にはマリンレイクと呼ばれる海水の湖が52あり、その一つ一つが全く違った世界を持っています。

1つ目のマリンレイク

狭い水路で僅かに海と繋がった湖の閉ざされた環境は、外海よりもずっと安全で、小さな魚たちの隠れ家になっています。

マンジュウイシモチ

パラオクサビライン(サンゴの仲間)の中に、頭の赤い小さなエビのコロールアネモネシュリンプが隠れていました。

極彩色のニシキテグリ

2つ目のマリンレイク

次のマリンレイクは海中のトンネルだけで外海と結ばれています。

カヤックに乗ってこの湖に入ることができるのは年に数回だけ、潮が大きく引いた時に限られるそうです。

海面に姿を現した海底トンネルの天井部分すれすれの海面の上をカヤックで中へ進んでいきます。

湖底の様子がくっきりとわかるほど、透明度が高く浅瀬になっていて、水中には光が満ちあふれています。

カラフルな珊瑚礁が湖底にひしめき合っています。

サンゴにとっては最適な生育場所です。

サンゴの体内には藻類(そうるい)が共生しています。

珊瑚礁の美しい色はこの藻類の色なのだそうです。

 

≪一面のオレンジ色に染まる湖≫

上空から見下ろすと、島を覆い尽くす緑の森の中に外海から閉ざされぽっかりと穴が空いたような3つ目のマリンレイクがあります。

よく見ると湖の水面が薄いオレンジ色に染まっています。

そのオレンジ色の正体、それはなんと600万匹にもおよぶクラゲの大群がぷかぷかと水中を漂うように泳いでいるのです。

水面が一面の淡いオレンジ色をしているように見えるのは、全てクラゲなのでした。

 

太平洋に浮かぶパラオのある島に上陸し、深い森を進み、小高い山を越え、島の中央部にある湖を目指します。

この山の中の湖は小さな穴で海と繋がっているだけのマリンレイクで、ジェリーフィッシュレイクと呼ばれます。

潜ると、水中にはキノコの傘のような姿をした600万匹にもおよぶタコクラゲの仲間が、薄いオレンジ色で半透明のゼリーみたいに、ふわふわと辺り一面を漂っています。

ジェリーフィッシュレイクに棲むクラゲの毒は弱いため、素手で触っても大丈夫です。

世界で唯一、クラゲと一緒に泳ぐことができる湖なのだそうです。

ジェリーフィッシュレイクに棲むクラゲの体長は10cmほどで、外海に棲息している通常のタコクラゲと姿形が異なります。

普通のタコクラゲには長い足のようなものが伸びていて、その中には毒針が仕込まれていて、外敵から身を守ったり、餌を獲ったりします。

しかしそれに比べて、ジェリーフィッシュレイクに棲むクラゲの足は非常に短く、外海から切り離された環境の中で外敵がいないため退化したと考えられているそうです。

 

朝日が昇ると、クラゲたちが一斉に水面に向かって浮かび上がります。

彼らの透き通った体の中をよく見ると、オレンジ色の粒がびっしり詰まっています。

これは褐虫藻(かっちゅうそう)と呼ばれる藻類で、この褐虫藻がクラゲに栄養を与えているそうです。

タコクラゲの細胞内で共生する丸い粒が褐虫藻(写真提供:東京海洋大学 石井晴人氏)

褐虫藻は太陽の光で光合成を行い、それがタコクラゲのエネルギー源になります。

そのため、餌を探す必要もありません。

彼らはただ光を求めて漂います。

こうして閉ざされた湖で生き延びてきた、世界でここだけのクラゲなのです。

 

思わぬ敵がいました。

湖の縁に棲むイソギンチャクが、白く細長い触手を揺らめかせています。

イソギンチャクは、毒のある触手で近づいたクラゲを捕まえます。

クラゲは逃げられません。

イソギンチャクの餌食になったクラゲの残骸を今度は魚がついばみます。

 

夜になると、海面付近にクラゲたちの姿はありません。

少し深いところで集まり、陽が昇るまでゆらゆらと漂い続けます。

撮影のための水中ライトに向かってきたタコクラゲの一団に、周囲をあっという間に取り囲まれてしまいました。

 

≪ミルキーウェイ:サンゴの泥で全身パック≫

世界一マリンレイクが密集しているパラオで、女性客に大人気の湖が、乳白色の美しい水面が広がるミルキーウェイです。

湖の底に溜まった真っ白な泥は、サンゴの欠片が砕けて沈殿したもので、それが太陽の光で発酵されて美肌に良い成分になったそうで、ホワイトクレイと呼ばれています。

海底に潜ってバケツに集められた採れたてのホワイトクレイを全身、もちろん顔にもたっぷりと塗りたくります。

ホワイトクレイを塗りたくって真っ白になった後、太陽の光を浴びて乾かしたら、水の中へと飛び込みます。

泥を落としたらお肌はツルツルになるそうです。

 

≪豊かな海≫

世界最高峰のドロップオフといわれるダイバーの聖地ブルーコーナーをはじめ、珊瑚礁が広がるラグーンの外側では地形は一気に深い海の底へと落ち込みます。

海底の断崖に集まるギンガメアジの大群

潮の流れに乗って深海から栄養分が湧き上がってくるため、海の中の断崖は魚たちの絶好の餌場となっています。

アカマツカサの群れ

珊瑚礁が長い年月をかけて積み重なり、複雑な地形を生み出してきました。

“海底のミーアキャット”のようなポーズをするチンアナゴ(ガーデンイール)

 

夜、真っ暗な海の中に潜ると、パラオの海は全く別の顔を見せます。

海中の崖、水深10m辺りに水中ライトを仕込んで待ちます。

豊かさの秘密である膨大な数のプランクトンがライトの光の中を白い影のようになって泳いでいます。

テンジクダイの仲間

モンダルマガレイ

サザナミショウグンエビ

ウナギの仲間

皆、1cmほどの小さく透明な体をした魚の稚魚たちが泳いでいます。

彼らは昼間は深い海に隠れていて、大きな魚が眠る深夜になると、餌を食べるために浅い場所へやってくるのだそうです。

 

朝になり、稚魚たちが深海へ帰ると、断崖には外洋からイレズミフエダイの大群が現れました。

春の新月の前、数万匹が年に一度、ここで産卵が行われます。

急激に落ち込んだ海の絶壁では潮の流れが速くなって、産んだ卵を遠くまで運んでくれることを知っているのです。

新月の大産卵が始まりました。

1匹のメスが産卵を始めると何匹ものオスがその後を追いかけて泳ぎながら精子を振り掛けます。

その卵を狙う他の魚たちも集まってきました。

フエダイたちの卵で海はみるみる白く濁っていきます。

パラオの海に浮かぶロックアイランド、それは一つ一つが違った世界を持つ、小さな宇宙の集合体です。

 


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アクセス:パラオ(Palau)

南部ラグーンのロックアイランド群(ロックアイランドの南部の干潟)
Rock Islands Southern Lagoon

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