プエルト・プリンセサ地底河川国立公園(フィリピン・パラワン島)

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2013年8月11日放送「THE 世界遺産 World Heritage」は、「探険!世界一長い地底の川 ~ プエルト・プリンセサ地底河川国立公園(フィリピン)」でした。

 

 

≪重りなしでも浮かばない サンゴの海底を裸足で歩く超人技≫

フィリピン(Philippines)の南シナ海で、海に生きる超人と出会いました。

超人技の持ち主は手作りの木製の水中眼鏡を掛けて、海の底に飛び込みます。

昔ながらの素潜り漁です。

身長ほどの長さのある銛を手に、海水パンツ1枚の姿で、水深25mの海底までまっしぐらに下りていきます。

普通なら浮き上がってしまいますが、重りも付けず浮力に反してサンゴ礁が広がる岩場の海底を素足で歩いて行きます。しかも無酸素状態。まさに超人技です。

腰の後ろには船上から延びたロープが繋がれています。

コーラルブルーの海は海底でも高い透明度です。

サンゴ礁に隠れた獲物を探して水中歩行を続け、5m以上も離れた場所から銛で一撃!

泳いでいる魚の体を銛が射抜き、見事に命中。百発百中の腕前です。(すごい射程距離と命中精度です)

先住民バジャオの漁師、ジャジ・カルーマンさん「海底は魚の住処として相応しい場所です。なぜならサンゴ礁をはじめ、多様な地形があるからです。」

海底のサンゴ礁のアーチは、高さ10mくらいあります。小さな海の生物であるサンゴは無数に集まり、硬い骨格を作ります。

美しい島を生んだのもこのサンゴ礁でした。

 

≪フィリピン最後の秘境≫

海岸に大きな黒い口を開ける洞窟。実はここは世界一長い地底の川であり、船で探検することができます。

源流を目指して熱帯の森へ。地上にはこの島だけの動物がいっぱいです。

フィリピンの秘境に分け入ります

 

≪サンゴ礁が生んだ石灰岩の島 世界最長の「地底を流れる川」≫

パラワン諸島、南シナ海に1700もの島々が浮かびます。

フィリピンの首都マニラから南西600kmにあるパラワン島(Palawan)は「フィリピン最後の秘境」と呼ばれます。

一帯はサンゴ礁の海であり、パラワン島北部のエルニド(El Nido)は世界有数のリゾート地です。

太古の昔、海底にサンゴなどの死骸が大量に降り積もり、石灰岩の地層ができました。後にそれが隆起して無数の島々の姿となったのです。

石灰岩の島は雨水に溶けやすく、不思議な形に浸食されました。

カルスト地形(Karst)と呼ばれる石灰岩の地形は、石灰岩などの水に溶解しやすい岩石で構成された大地が雨水、地表水、土壌水、地下水などによって侵食(主として溶食)されてできた地形(鍾乳洞などの地下地形を含む)のことです。

パラワン島も石灰岩が隆起してできた島であり、ほとんどが山とジャングルで占められています。その手付かずの大地の地下に、川が流れています。

セント・ポール山(St Paul)の中腹から地底を流れ続ける川(地底河川)の全長は8.2kmで、直接そのまま海へと注いでいます。

パラワン島の西海岸にプエルト・プリンセサ地底河川の河口があります。

海から内陸へ地底の川を遡ることができるのです。ぽっかりと黒い口を開けた洞窟の先には、闇の世界が広がっています。

 


大きな地図で見る

 

≪世界一長い地底の川を探検する「アンダーグラウンド・リバー・ツアー」≫

なぜ大地の下に河川が流れているのでしょう?

世界一長い地底河川の奥へ。

手漕ぎボートに乗り込み、洞窟の中へ入っていきます。

満潮で水嵩が増していました。

洞窟には魔物が棲むと島民の間で恐れられ、それまで人が立ち入ることがありませんでしたが、19世紀末に欧米の探検家が初めて踏み込みました。

石灰岩が生んだ風景

「マッシュルーム」と呼ばれる岩

そこで目にしたのは、奇妙な形をした石や天井から氷柱上の石でした。洞窟は鍾乳洞だったのです。

ライトの光に浮かび上がる巨大な空間「カテドラル(大聖堂)」

高さ10mの鍾乳石「キャンドル」

水滴に含まれる石灰分が固まり、少しずつ成長しました。

鍾乳石が伸びるスピードは1年にわずか0.1mmです。

数十万年もの時をかけて天井から地面まで繋がった石柱

キラキラ輝くのは炭酸カルシウムの結晶です。

鍾乳石は不純物が少ないほど真っ白になるのだそうです。

さらに奥へと進むと奇妙な模様の壁が現れました。

表面にまるで魚の鱗のような丸いボコボコした窪みの模様が、びっしりと並んでいます。水深5m近くにも同じ鱗模様が付いています。実はこの鱗模様は川の流れが作りだしたものです。時に激流が渦を巻き、水に含まれる砂や粒子が壁を削ったのです。

 

パラワン島の地形に秘密がありました。

海から吹いてくる湿った風が山にぶつかり、激しい雨を降らせます。年間降水量は3000mm以上にもなるパラワンは、雨の島なのです。

大量の降雨が石灰の岩山を溶かし続け、地下へと染み込み、一筋の流れになったのです。

石灰岩の台地と大量の雨が生んだ神秘の島、それがパラワンです。

 

≪雨に溶けやすい石灰岩 世界遺産になった奇観≫

世界遺産には、石灰岩が創った絶景がいくつも登録されています。

雲南の三江併流保護地域(雲南保護地域の三江併流)(中国)
Three Parallel Rivers of Yunnan Protected Areas

中国雲南省にある白水台は、少数民族ナシが崇める純白の丘です。

地上に湧き出した水が生んだ石灰棚です。

その美しさは仙人が残した棚田に喩えられました。

メキシコのユカタン半島にあるシアン・カアン(シアン・カーン(Sian Ka’an))

その石灰岩の台地にいくつも口を覗かせるのは、セノーテ(Cenote)と呼ばれる泉で、ダイバーたちが憧れる水中鍾乳洞です。

無数の水中鍾乳石が幻想的に並んでいます。

石灰岩の地層が水を濾過したため、透明度は抜群です。

ヴェトナムのハー・ロン湾(Ha Long Bay)に浮かぶ大小2000の島々は、雨水に溶けやすい石灰岩ならではの天然の彫刻です。

ヴェトナム語で、ハーは「降」、ロンは「竜」、ハー・ロンで「降り立つ竜」という意味を持つといいます。

観光船に乗って一巡り。

「闘鶏」と名付けられた向かい合う一対の島。

「親指」や「横顔」などの島の姿も。

 

≪世界一長い地底の川を探検 闇の世界の住人たち≫

地底を流れる川をさらに奥の方、上流へと遡ります。

甲高い鳴き声が響いています。

天井にライトを当てると1万匹以上ものコウモリの群れがいました。グールドカグラコウモリです。

光が全く届かない鍾乳洞は、彼らコウモリたちにとって格好のねぐらです。

その真下ではヘビが待ち伏せしています。立ち泳ぎのように水面から頭を突き出し、上空を一心に見張りながら泳ぐフィリピンナメラの姿がありました。水面に浮かびながら天井から誤って落ちてくる子どもを狙っているのです。

2011年、鍾乳洞の壁から不思議な骨が発見されました。

調査の結果、2000万年前のジュゴンの祖先※の化石(肋骨と背骨)であることが分かりました(※ジュゴンの仲間)。ジュゴンの骨が埋もれていた海底が隆起し、その後、岩肌が浸食されたことで、偶然姿を現したのだといいます。

河口から遡ること4km、天井が狭くなり、洞窟の幅が狭くなってきました。

そして河口から4.3kmの地点、遂に行き止まり、崩れ落ちた岩が進路を塞ぎ、ここが船で行ける限界です。

地底の川は岩場の下で繋がり、さらに上流へ4kmも続いているといいます。

 

≪地底河川の源流はどこ? 珍獣たちの森を探検≫

源流はどうなっているのか?

山側から挑みました。

パラワン島(Palawan)にそびえる1000m級の峰、セント・ポール山(St Paul)の中腹から地底河川は流れ始めます。

ジャングルの森の奥地に、50mもの巨大な穴が空いていました。

声の主はカニクイザルです。森に響き渡る声で遠くの仲間と連絡を取り合います。

樹の上に隠れているのはパラワンベアキャット(固有種)です。黒い毛に覆われクマのようなネコのような、アライグマのような姿。ここだけに棲む珍獣です。

下草の茂みにいたのはパラワン島のシンボル、パラワンコクジャク(固有種)です。ブルーバイオレットの色合いを持つ美しい羽根は独特の光沢を持っています。

こうして多くの固有種が身を寄せる森も、世界遺産の一部です。

鬱蒼としたジャングルの森を抜けると、足元には大きな岩がごろごろと転がっています。

山の中腹に、突然巨大な穴が姿を現しました。デイライトホールです。

デイライトホールの直径は50m、深さは45mにも及びます。雨水が浸食し、地面が崩れ落ちたのです。

撮影隊は源流を目指して、深い穴の底へと下りていきました。

ポタリ、ポタリ、一滴一滴、滴り落ちる雨水。それが岩肌を伝い、地下へ吸い込まれ、流れを生みます。地底の川の源流はこのデイライトホールの下から始まっていました。

大量に降った雨が大地へ染み込みます。網の目のように広がる地下水脈は一本の川筋となりました。それが地底を削り、そのまま海へ流れ込んだのがこのプエルト・プリンセサ地底河川です。

世界一長い地底河川は、やがて太陽の光溢れる海へと帰って行きます。

河口から源流の森までの豊かな自然、プエルト・プリンセサ地底河川は1999年、世界自然遺産に登録されました。

 

≪海の上で暮らすバジャオの人々≫

海の上に不思議な集落がありました。

浅瀬に杭を立てて作った水上ハウスが並んでいます。先住民バジャオの家屋です。

どこの家も大家族です。

毎日、男たちは揃って素潜り漁に出掛けます。

息子たちはロープを手繰り、海に潜った父親を引き上げます。

獲った大きな魚で昼ご飯です。

鍋とコンロが出てきました。魚は船上ですぐに捌きます。料理は一切味付けなしで、鍋で茹でれば出来上がり。これがバジャオ流です。

熱々を頬張る。家族の幸せは全て海。

昔ながらの生き方です。

 

≪海と川の交差点 マングローブ林の生き物たち≫

地底の川の近くにもう一つ、不思議がありました。

森の中をエイが悠々と泳いでいます。

地底河川をはじめ、いくつもの川が流れるパラワン島の河口には、独特の世界が広がっています。

マングローブ林は海と川の交差点です。

河口近くで面白い現象が起こっています。

手前と奥で水の色が違います。手前は濁っていて、奥(海側)は澄んでいます。青く透明なのは海水で、濁っているのは川の水です。

二つの水の境目が潮目です。

川が運んできた養分が豊富な潮目では、プランクトンがよく繁殖します。海水魚たちがやってきました。潮目は魚にとって絶好の餌場なのです。

河口から上流に1km遡ったマングローブ林で、エイを見つけました。ヒョウモンオトメエイです。

満ち潮になると、海水は内陸へと入り込みます。

エイはその潮目を追って泳いできたのです。

こうした淡水と海水が交わる場所ならではの漁に出会いました。

6時間毎に繰り返される干満のリズムを利用して、漁師は木製のカゴを仕掛けます。罠に掛かっていたのは大きなカニです。

地元漁師のテディ・ボンガルシオさん「マングローブに棲むカニ、ノコギリガザミです。高級食材として人気があるんです。」

潮が引くと干潟が一面に広がりました。

ミナミトビハゼはこの時を待っていました。前ヒレを足のように器用に使ってピョンピョンと跳ね歩き、地面を這いながら好物のプランクトンにありつきます。

ここは命を繋ぐ、海と川の交差点です。

 

プエルト・プリンセサが織り成す自然、その山も、川も、森も、海も、すべては地底と繋がっています。

 

 

アクセス:
フィリピン共和国(Philippines)

プエルト・プリンセサ地底河川国立公園
Puerto-Princesa Subterranean River National Park

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コメント

    • k-co
    • 投稿日 (Posted on):

    ペディキュアを長い間塗りっぱなしだったので、除光液でオフしてみたら爪の表面が白く乾燥しておりました(涙)
    夏なので足の保湿ケアなんて不要と思っていましたが、紫外線やクーラーにより爪が乾燥してしまうようです。
    女性誌を見ていたら、ちょうど爪トラブル用アイテムが掲載されていたので、試してみようかと検討中。
    素足になる夏こそ、爪のケアって大事ですね。

    • k-co
    • 投稿日 (Posted on):

    紫外線ケアは3日目までが勝負!?
    肌がメラニンを作るのは紫外線を浴びてから3日目から、というのをご存じですか?
    それまでに、美白美容液で早めのお手入れが大切なのだそう!
    最新の技術で「濃いシミの原因」も明らかに
    (http://column.kirei.woman.excite.co.jp/article/rid_E1455490889117/)

  1. 2013年 8月 12日

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