アラスカの氷河湾(グレーシャー・ベイ)

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Tail of a Humpback Whale in Frederick Sound

2012年11月25日放送「THE 世界遺産」は、「世にも不思議な氷河湾 ~ アラスカ・カナダの氷河地帯II」でした。

 

アラスカ・カナダの国境に広がる、世界最大級の氷河地帯。

その南端、グレーシャー・ベイ国立公園の8月

8本の氷河が注ぐ海には、氷河の壁が砕けながら流れ込みます。

グレーシャー・ベイ(またはグレイシャー・ベイ)とは氷河の流れによってできた湾(氷河湾)という意味で、ここは氷河期の名残、太古の姿を今にとどめている場所であり、アラスカ屈指の野生動物の楽園でもあります。

海岸に押し寄せたマージョリー氷河の断崖の高さは60メートル。

氷河が削り取られてできた谷に海水が入り込んだ入り江には、縄張り争いに夢中のトドの群れがいます。

グリズリー

断崖に住み木の枝、苔などを食べるマウンテン・ゴート

 

グレーシャー・ベイは夏でも水温7度ほどです。

また、透明度の低さも特徴的です。

山肌を削り取りながら海に注ぎ込む氷河は、豊富なミネラル分を運び込むのです。

それがプランクトンを大発生させるため濁るのです。

この濁りがかった海は、命のスープともいえます。

 

海底には不思議な生き物たちが息づいています。

バスケット・スター(ウミヒトデの仲間)

長く伸びた角を使って泳ぐセルフィン・スカルピン(カサゴの仲間)

黄色いウミウシの仲間、オレンジピール

ダンジネス・クラブ(カニの仲間)がカレイを獲っています。

世界最大級のヒトデは体長50センチ以上。ホタテが二枚の貝を使って蝶のようにヒラヒラと浮かび上がりながらすばしこく逃げます。ナマコも身をよじらせながらかわします。

ブル・ケルプ(コンブの仲間)は光を求めて1日に25センチも伸びるそうです。

 

グレーシャー・ベイでは許可を貰うと、釣りを楽しむことができるそうです。

ニシンをエサにハリバットを釣り上げると、港の近くのお店でスパイスたっぷり燻製にしてもらうことができます。

巨大なカレイの仲間であるハリバットは、大きなものでは2メートルにもなるそうです。

ハリバットはスモークの他には、切り身を冷凍パックにしたアラスカで大人気のお土産にすることもできるそうです。

 

夏になると、ザトウクジラの群れがやってきます。

彼らはハワイ沖で出産・子育て後、ニシンの大群を目当てに太平洋を北上してくるのです。

体長14メートルにもなる彼らは、集団で漁をします。

 

ザトウクジラは手厚く保護され危険を感じていないようで、陸地に近づくことも多いそうです。

尾びれを海面に高く上げるのは深く潜る印です。

彼らのゾウのような音(声)を発するタイミングが上がってくる合図です。

下から大きな口を開けて海水ごと魚の群れを飲み込みます。

 

ザトウクジラは集団で魚の群れの下に行き、空気の泡を吐きながら周囲を囲い込むように円を描いて泳ぎます。

気泡の中に魚の群れを閉じ込めると音を発して、海面に向かって逃げる魚の群れを追い込んで漁をします。

チームワークを活かした漁は、バブルネット・フィーディングと呼ばれるそうです。

1頭で1日に1.2トンも平らげるそうです。

命溢れる海での、壮大な命のめぐりです。

 

カヤックツアーでは、氷河の絶壁のすぐ手前、断崖まで数十メートルのところまで行くことができます。

流氷の上で子育てゼニガタ・アザラシも音がないから逃げないそうです。

 

リード氷河、ミュアー氷河の後退によって、1899年の写真では氷の壁が迫っていた場所とは思えないほど氷が消えて、緑の大地が広がっているエリアがあります。

200年前には氷が覆い隠していたグレーシャー・ベイには、奥行き100キロにも及ぶ入り江ができました。

なぜ一面氷に覆われた氷河の世界が消えて、鬱蒼とした森ができたのでしょうか。

氷河が後退した直後には、岩だけが剥き出しの荒涼とした大地が残ります。

そこに、大気に含まれる水分で成長できる苔類が生えて土壌の役割を果たします。

風に乗って新しい植物の種が運ばれてきて、芽吹いていきます。

 

新しい森に生えるハンノキの根にはバクテリアが共生していて、栄養の乏しい土壌でも植物にとって効率よく吸収できるようにしてくれます。

落葉は新しい養分になります。

海風が高い山にぶつかって大量の雨を降らせ、針葉樹が生え、わずか200年で深い森に変わっていくのです。

 

その変わりゆく自然の姿は、1万年前に終わった氷河期から、地球がどのようにして緑を甦らせたのかを教えてくれる、生きた教科書のようです。

わたしたちは、ここで、地球の過去を知り、未来を知るのです。

 

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アラスカとカナダの国境地帯、太平洋沿岸に連なっている4つの自然公園が、世界遺産「クルアーニー/ランゲル-セント・イライアス/グレーシャー・ベイ/タッチェンシニー-アルセク(Kluane/Wrangell-St Elias/Glacier Bay/Tatshenshini-Alsek)」に登録されています。

この4つの自然公園の総面積は、東京ドーム約200万個分に相当する10万平方キロメートルにも及ぶそうです。
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アクセス:

クルエーン国立公園(カナダ)
ランゲル=セント・イライアス国立公園(アメリカ国アラスカ州)
グレイシャー・ベイ国立公園(アメリカ国アラスカ州)
タッチェンシニー=アルセク公園(カナダ国ブリティッシュ・コロンビア州)

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