ジャイプルのジャンタル・マンタル(インド)

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2013年6月9日放送「THE 世界遺産」は、「国を動かした星占い巨大装置 ~ ジャイプルの天体観測施設(インド)」でした。

 

 

インド・ジャイプルの街に、評判の星占い師がいます。

インド占星術で2013年の日本の未来を占ってもらいました。

惑星の位置から未来を予測するそうです。

「金星の影響によって西東に波風が立つと出ていますが、 1年間は国の安定が保たれるでしょう。」

 

ジャイプルの天体観測施設は、今から300年ほど前に作られた不思議な装置です。全ては星占いのためでした。

街の真ん中に巨大な三角形がそびえます。実はこれ、星占いのための装置なんです。

まるで遊園地のようです。よく見ると星占いで言うところの12の星座が描かれています。

サソリの絵は蠍座(さそりざ)Scorpio

ヒツジの絵は牡羊座(Aries)

300年ほど前の天体観測施設ですが、今も占星術に大活躍しています。

 

街で人気の占いの館にて、「娘が見合いをするので相手の男性との相性を見てもらいたいんです」父親がやって来ました。

占い師が見ているのは、 2人が生まれた時の星の配置、ホロスコープ(星の配置図)です。

占星術師パンディット・マートルさん「木星、太陽、月の配置を見ると、相性はとても良いと思いますよ。」

 

インドの星占いに欠かせないのが「天文表」、それはかつては国をも動かしました。

王宮で暮らすマハラジャが作り出した巨大な装置がジャイプルの天体観測施設(天文台)です。

全ては星占いのために、古からの天文学を集大成したのです。

 


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インド北部、この地方を治めた王様マハラジャは、18世紀に新しい街「ジャイプル」を建設しました。

城門をくぐった先が、旧市街です。

メインストリートの建物は全て、ピンク色です。ピンク・シティと呼ばれました。

おとぎの国の都のようなどこか不思議な雰囲気を持った街です。

王宮は街の中心にあります。

宮殿の庭に、天体を観測するための機器がいくつも作られました。

 


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≪マハラジャの夢、1つ目≫

マハラジャは高さ27mもある巨大な三角形がそびえる世界最大の日時計を建造しました。

正確な時刻を知るため、マハラジャが自ら設計した日時計には、三角形の建造物の斜面に外階段が付いています。

両脇には直角に翼を広げたような半円形のカーブが付いています。

今、何時なのでしょう。

カーブにはびっしりと目盛りが刻まれています。

もっとも細かい目盛りは2秒単位です。

その上が6秒単位、1番上の3段目が1分単位です。

巨大な三角形の影が半円形のカーブの上に落ちます。

その影の位置で時刻を読むのです。

サンスクリット語の数字の4です。それよりもやや手前に影があるので、 3時58分すぎです。

大きい装置で秒単位まで時刻を知ることそれがマハラジャの権威を高めました。

しかし、巨大化するほど影がぼやけてしまうのです。そのため細い糸を使って影の先端を見極めていました。

世界最大の日時計にはもう一つの機能があります。

窓のない建物内部の天井から差し込む一筋の光によって太陽の高さを測る装置です。

天文学者オーム・プラカーシュ・シャルマさん「光が差し込むのは太陽がジャイプルの真上を通る正午の前後2分間だけです。条件が良いと太陽の黒点まで観測することができるんです。 」

わずか3mmの穴から差し込む光は、黒点さえわかるほどとてもくっきりしています。

ここにもやはり目盛りがあります。光と影を巧みに操り、天体の動きを知ろうとしたのです。

 

王宮には不思議な形の装置が全部で18種類もあり、サンスクリット語で「JANTAR MANTAR(ジャンタル・マンタル):魔法の仕掛け」と名付けられました。

ジャンタル・マンタルは、ジャイプールを建設したムガール帝国のマハラジャ(王様)であり、天文学者でもあったサワーイ・ジャイ・スィン2世によって、1728~1734年に、ジャイプールの中心部に建設されました。

その一つ一つはまるで、モダンアートのオブジェを眺めているような気持ちがしてきます。

望遠鏡を使わず自分の目で宇宙を眺める。古代から続く天文観測がここで極められたのです。

中心に建てられた棒の影が日の光とともに動き、太陽の高さと方位を示します。

もう一つの日時計は、背中合わせになっています。

上向きの円盤は、太陽が高い位置にある春から秋に使います。

下向きの円盤は、その裏側、太陽が低くなると使います。

ここが18世紀のインドの頭脳、まさに星の都でした。

 

≪パワーストーンの宝石≫

ジャイプルでよく見かけるのがジュエリーの看板です。

マハラジャの宮廷が置かれると宝石の街になったのです。

女性たちは、自慢のアクセサリーを身につけ、美を競い合いました。

今も世界中から原石が集まります。

インドでは宝石に惑星のパワーが宿ると信じられています。

幸運を呼ぶエメラルドは水星のシンボルです。

病気から守ってくれるルビーは太陽の力。

長寿を表すサファイアは土星を表します。

ジュエリー職人たちが熟練の技を磨きながら、美しい装飾品を生み出してきました。

惑星の石を九つあしらったものが一番人気で、全宇宙のパワーを纏う最強のお守りなのだそうです。

 

≪マハラジャの夢、2つ目≫

12星座占いが国を動かしました。

ジャイプルの街に評判の占いの館があります。

「子どもが誕生したのでどのような星の巡りのもとに生まれたのか見てもらいに来たんです。」

インドの占星術で大切なのは、生まれた時間と場所です。

占って欲しい子供の星座は魚座、魚座を中心に生まれた時の星々の位置をホロスコープで示します。

インドの星占いは独特です。

1年だけでなく、1日の中でも約2時間ごとに星座が移り変わっていき、12星座×2時間 = 24時間(1日で1周)となります。

生まれたときに、ジャイプルから見て東の空に何の星座が見えるか、これがその人の誕生星座となるのだそうです。

ホロスコープの中心、上部のマスが誕生星座の部屋、あとはどの星座にどの惑星が位置しているかを書き込めばホロスコープが完成します。

占星術師パンディット・マートルさん「生まれた瞬間、魚座の方角に火星と太陽が見えます。その時の金星の位置から家族を発展させると出ています。木星の力も強いので賢い子に成長するでしょう。 」

インドの星占いになくてはならないのが天文表です。毎年最新版が発行されるそうで、それは今でも王宮での観測に基づいて作られているそうです。

 

≪星占いで国を治めたマハラジャ≫

王宮ではハマラジャ自らが星の観測を行いました。

星座ごとに12の観測器があります。上半身は弓矢を持った人間、下半身は馬です。

射手座(Sagittarius)は上半身は弓矢を持った人間、下半身は馬です。

装置は12の星座に合わせて、微妙に違う方向を向いています。

滑り台のような形をした斜面の傾きも山羊座、蟹座、牡羊座、水瓶座、それぞれ異なります。

例えば山羊座用観測器は、1日の中でやぎ座の時間帯に惑星の位置を観測するためのもので、山羊座の時間帯は1日の内、2時間あり、その時に天球のどの位置に惑星が見えるかを観測します。

マハラジャは空に向かって物干し竿のように細長い金属製のパイプを覗きながら位置を特定しました。

大事なのはあくまでもジャイプルから見える星の位置です。それが星占いの元になるのです。

この観測をもとに天文表が作られ、宮廷の占い師が国の未来を占いました。

国を挙げての天体観測、全ては星占いのためでした。

1740年当時の天文表が残されています。これこそが国の羅針盤でした。

18世紀のインドの天文学の頂点がジャイプルの天体観測施設(ジャイプールのジャンタル・マンタルなのでした。

 

≪ホーリー祭にも星占いが関係≫

春を迎える満月の日、粉を掛け合う不思議な奇祭ホーリーが始まります。

赤、ピンク、黄、緑、黄緑、紫、オレンジ・・・街角のあちこちに極彩色の粉を売る屋台が広がっています。

豊作を祈り、この粉を体中に塗りたくります。家畜の牛にも塗りたくります。

元は悪魔払いのために泥や汚物を投げたのが起源だといわれています。

ジャイプルでの祭りの開始時刻は、王宮の天体観測によって縁起の良い時刻が選び出されています。

街も人もみんなカラフルになります。

 

天体観測施設はジャイプルきっての観光名所です。

観光客の誰もが難しい顔でじっと足元を見つめているその視線の先には、大きな球体を2つに割ったような白い大きなオブジェが地面に埋まっているような形をした装置でした。

 

ジャイプルの王宮が建設されたのは今からおよそ300年ほど前でした。

青の間で年に1度ヒンドゥーの神様の誕生日をお祝いしました。

青色は、ヒンドゥーの神様の肌の色とされます。

優雅の間と呼ばれる黄金の広間も使われたのは年に1度の儀式の時だけでした。

中央に赤い玉座があります。この地方の王様マハラジャの特等席です。

宮殿を建てた主、サワイ・ジャイ・シン2世(1699-1744年)こそが、天体観測施設を作り、世に送り出したのです。

彼は優れた政治家であると同時に科学好きで、特に天文学に激しい情熱を注ぎました。

 

≪マハラジャの夢、3つ目≫

王宮の書庫

彼の3つ目の夢は、あらゆる機能を持つ装置を考案することでした。

マハラジャが世界中から集めた天文書です。

当時のインドの暦は古くて正確さを欠いていました。

国を動かす星占いには、もっと正しい知識が必要だと考えたのでした。

1725年、ドイツから取り寄せた天文書には、「水星と金星の軌道計算の図」とマハラジャのメモが残っていました。

彼は研究を重ね、自らが設計し、王宮の庭に18種類もの天体観測施設を作り上げました。

最後に行き着いた集大成が、直径5メートルを超える2つの半球体です。

この二つの半球体には、白大理石を埋め込んでいます。

上部の中央が天の北極で、半球の底の真ん中がジャイプルの真上を示します。観測点のジャイプルを中心に宇宙をひっくり返した形になっています。

隙間は人が入って観測をするための通路です。

細かい線は、星座や惑星の位置を定するための目安です。

山羊座
射手座
魚座
天秤座

天文学者オーム・プラカーシュ・シャルマさん「これはマハラジャが開発した観測器の中で最も優れたものです。天体のあらゆる動きを同時に知ることができます。この影が太陽です。」

ワイヤーで吊られた円盤が半球に落とす影を太陽に見立てました。

影の場所から、星座の位置などジャイプルから見た天体の様子、つまり占いに必要なことがすべて分かりました。

まさに傑作でした。

 

こうして知った星の位置が国の政治を動かしたのです。

1788年の占いには「国境地帯は安泰である」、「今年は雨に恵まれるため、人民は安らかに過ごせるであろう。」などと記されていました。

ヨーロッパでは当時、すでに望遠鏡による観測が始まっていました。

確かにジャイプルの巨大な観測施設は時代遅れとなったわけではありますが、それでも、300年前の装置は今もなお、正確な暦を刻んでいるのだそうです。

 

宇宙を自分の目で見つめる、そんなマハラジャの夢は、今も続いています。

 

 

アクセス:インド共和国(India)

ジャイプルの天体観測施設(ジャイプールのジャンタル・マンタル)
The Jantar Mantar, Jaipur

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コメント

    • k-co
    • 投稿日 (Posted on):

    高級毛織物の「カシミア」といえば、どんな動物から取れた毛でできているでしょう?
    正解は「ヤギ」です。
    インドのカシミール地方に生息するカシミヤヤギの毛で作られています。手触りが極めて柔らかくしかも軽いことで尊重されますが、型崩れしやすいので取り扱いには慎重を要します。

    • k-co
    • 投稿日 (Posted on):

    2015年12月25日、大安、仏滅といった「六曜」を記載していたとして、大分県の佐伯市、杵築市、臼杵市農業者年金協議会(同市の農業者年金受給者で構成)、国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会(県や国東半島周辺の6市町村で構成)の4者は、それぞれ作製していた来年のカレンダーなどの配布を中止した。いずれも「六曜は科学的根拠のない迷信や慣習であり、ひいては差別を助長しかねないが、作製後に気づいた。公的な配布物としてふさわしくないと判断した」と説明している。県によると、毎年発行している県民手帳には1995年版から六曜を掲載していない。人権教育のために作製した資料には「同和問題の解決を阻む迷信・因習」に六曜を挙げている。佐伯市は同日から、市内の全約3万3600世帯を対象に「10年日記帳」を配布する予定だった。約2500万円をかけて5万冊を作製していた。杵築市も「杵築市世界農業遺産カレンダー」を初めて作り、同日から市内約1万1千世帯に配布する予定だった。80万円をかけたが、新たに50万円ほどかけて再印刷し、1月15日に配る予定だという。県や国東半島周辺の6市町村などでつくる「国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会」も同日、同じ理由で「世界農業遺産フォトカレンダー」の回収を決めた。59万4千円をかけて2千部を作成。関係機関などに1870部を配った。再発行の予定はないという。臼杵市の農業者年金受給者でつくる市農業者年金協議会も25日、六曜を掲載したとして来年用のカレンダーの回収を始めた。年金の普及を図るため12万円をかけて300部作製し、会員と農業委員計226人に配っていた。

      • k-co
      • 投稿日 (Posted on):

      じゃあ、あんたらは七五三も葬式も成人式もやるな!「科学的根拠があるかないかだけでしか物事を見られないこと」の方が、よっぽど「差別を助長」するってことが分からないとは愚かなり(笑)。この世界は色即是空、空即是色。見えないものにも、あらゆるものに全てちゃんと意味がある。

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